「借金を返しきれなくなってしまったから、自己破産したい……。でも、借金の免除なんて、そんなに簡単には認められないよね……」
自己破産の手続で、債務の支払が免除されること(裁判所から免責許可決定を得ること)が非常に困難だと思っている人は少なくありません。
しかし、「自分は免責など認めてもらえない」と思っている方でも、免責許可決定が出る可能性はあります。
実は2017年には、自己破産を裁判所に申立てた人のうち96.7%が免責許可決定を獲得しているのです。
この記事では、
- 免責許可決定が出た割合
- 免責許可決定の割合が高い理由
- 免責不許可となった場合の対処法
について弁護士が解説します。
参照:2017年破産事件及び個人再生事件記録調査(2)【データ編】破産事件記録調査|日本弁護士連合会
原則全ての債務の支払を免除される、「免責許可決定」が出る割合
先ほどご紹介した調査によると、2017年には、自己破産の手続を裁判所に申立てた1238人のうち、1198人が免責許可決定を得ています。
つまり、自己破産の手続を申立てた人のうち、およそ96.7%の人が無事に債務の支払から解放されていることとなります。
データは少し古くなりますが、2014年には1人も免責不許可となっていません(申立ての件数は1235件)。
参照:2014年破産事件及び個人再生事件記録調査|日本弁護士連合会
このように、免責許可決定が出る割合は非常に高いといえます。
免責許可の割合が高い理由
それでは、免責許可決定が出ることの多い理由を説明します。
(1)免責不許可事由があっても「裁量免責」となるケースが少なくない
「浪費をしていたら、自己破産は無理」などと聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
免責許可決定が出れば債務者の負担は大きく減る一方で、債権者は配当を受けられなかった分の債権回収を諦めねばなりません。
そのため、借入れが膨らんだ経緯などにおいて債権者に損害を与えたとみなされる一定の行為や、破産手続上の義務に違反したり手続を妨害したりするような一定の行為などが、「免責不許可事由」として法律上定められています(破産法252条1項)。
もっとも、免責不許可事由がある場合でも、実際には「裁量免責」となることが少なくありません。
裁判所が諸般の事情を考慮のうえ、免責不許可事由があっても免責を認めることがあるのです(破産法252条2項)。
浪費が原因で借金を抱えた場合について
免責不許可事由の中でもよくある、浪費がもとで返しきれない借金を抱えた場合を例にとって説明します。
2017年の日本弁護士連合会の調査では、自己破産を申立てた人が債務を抱えることになった原因について、次のとおり判明しています。
浪費・遊興費 4.07%
ギャンブル 2.16%
合計 6.23%
浪費や遊興費、ギャンブルが元で支払いきれない債務を抱えた場合は、免責不許可事由に該当します(破産法252条1項4号)。
しかし、先ほどから見ている調査によると、2017年に免責不許可となった人の割合は、約0.6%にとどまっています。
この統計結果から、
ギャンブルなどや浪費をしていても、免責が認められる場合はある
と分かります。
(2)弁護士が免責の見込みがあるか判断している
先ほどよりご紹介している日弁連の調査によると、2017年に自己破産の手続を申立てた人1238人のうち、1076人(約86.9%)が申立代理人として弁護士に依頼しています。
弁護士は自己破産について相談を受けた際に、「免責許可の見込みはあるか」を検討します。
裁量免責すら期待しにくい深刻な免責不許可事由がある場合には、他の債務整理で支払負担を減らせないかも考慮してくれます。
そのため、免責許可を期待しにくい案件については、自己破産の申立て自体がそもそも行われないことが多いといえます。
逆に言うと、申立ての準備や費用が無駄になる可能性を下げるためには、弁護士に自己破産について相談することがおすすめということになります。
(3)免責を見込めない場合は、裁判所が申立ての取下げを勧めてくれることがある
深刻な免責不許可事由があって自己破産は厳しいという場合には、弁護士は他の債務整理も検討します。
自己破産以外の債務整理には、主に次の2つがあります。
- 任意整理
支払い過ぎた利息がないか、負債を再計算します。
残った負債について、将来利息のカットや数年間での分割払ができないか、個々の債権者と交渉します。
- 個人再生
負債が支払えないおそれがある場合に、裁判所の認可決定を得て、法律に基づき決まった金額を原則3年間で分割して支払っていく手続です(税金など一定の負債は減額されません)。
任意整理をする場合よりも、総支払額を大幅に減らせることもあります。
また、条件を満たしていれば個人再生をしても住宅ローンの残っている自宅は手放さずにすみます。
しかし、任意整理も個人再生も、基本的には数年間支払い続けることが前提の手続です。
支払っていける見込みが乏しい場合、これらの手続を選ぶことは困難です。
そのため、裁量免責を得られる可能性が低いと分かっていても、弁護士と相談のうえ、免責許可を目指して自己破産の手続を進めなければならない可能性もあります。
このような場合に自己破産の手続を申立てると、「やはり免責許可を出すのは難しい」と判断した裁判所から、「申立てを取り下げて、個人再生など他の債務整理を目指しては」と勧められることがあるのです。
免責不許可となった場合の対処法
そもそも免責許可となるケースが多いことと、免責を見込めない場合には他の債務整理を選択するケースが多いことから、免責不許可となることは非常に少ないのが現状です。
しかし、ごく稀に免責不許可となる場合はあります。
それでは、免責不許可となってしまった場合の対処法を説明します。
(1)即時抗告を行う
免責不許可になった場合、その決定に対して「即時抗告」という異議申立てを行うことができます(破産法252条5項)。
即時抗告は、免責不許可の通知が届いた日の翌日から1週間以内に行わなければなりません(破産法13条、民事訴訟法332条)。
(2)個人再生や任意整理を行う
もっとも、免責不許可事由が深刻で、免責不許可を覆しがたい場合には、個人再生や任意整理など、自己破産以外の債務整理を検討することとなります。
【まとめ】免責不許可事由があっても裁量免責となるケースが多いこと、免責の見込みが低い場合には他の債務整理を選択するケースが多いことにより、免責許可となる割合は非常に高い
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 2017年には自己破産の手続を申立てた人のうち96.7%が免責許可決定を獲得しているなど、免責許可となった事例の割合はとても高い。
- 免責許可となった事例が多いのは、主に次のような理由による。
-免責不許可事由があっても、裁量免責が出るケースが少なくない。
-免責の見込みが乏しい場合は、弁護士や裁判所が他の債務整理を勧めることがある。
- 免責不許可となってしまった場合には、即時抗告を検討する、他の債務整理に移るなどの対処を行う。
アディーレ法律事務所では、万が一免責不許可となってしまった場合、当該手続にあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております。
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