後部座席のシートベルト着用は義務?違反した際の罰則もあわせて解説

「後部座席のシートベルト着用は義務なのか?」

皆さんは、この問いに対する正しい答えをご存じですか?

  1. 法的義務である
  2. 努力義務である
  3. 高速道路では法的義務だが一般道路では努力義務である
  4. 義務ではない

2や3だと回答する方がいらっしゃるかもしれませんが、正解は1です。

そのため、後部座席のシートベルト着用を怠れば道路交通法違反となります。 しかしその着用率は、運転者や助手席同乗者と比べ決して高いといえません。

そこで、今回のコラムでは、後部座席におけるシートべルト着用義務や、違反した場合の罰則などについて弁護士がご説明します。

後部座席のシートベルト着用は法律で義務化されている

2008年の道路交通法改正によって、原則として後部座席を含むすべての座席でシートベルト着用が義務化されました。

根拠となる条文を見てみましょう。

自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(省略)に乗車させて自動車を運転してはならない。(以下、省略)
引用:道路交通法第71条の3第2項

このように、運転者は自身がシートベルトを着用するだけでなく、運転者席以外のすべての同乗者にシートベルトを着用させなければいけません。

また、シートベルトの着用義務は高速道路か一般道路かで区別されていません。

運転手は、高速道路・一般道路にかかわらず、病気などやむを得ない理由がある場合を除き、原則として乗員全員にシートベルトをさせなければならないのです。

なお、6歳未満の子どもなどシートベルトを正しく着用できない場合には、チャイルドシートが必須です。

チャイルドシートを利用せずに、6歳未満の子どもを乗せて運転してはいけません(道路交通法第71条の3第3項)。

シートベルトリマインダーの設置も義務化

2020年9月以降、新型車では、後部座席でシートベルトをつけていない場合に警報の鳴るシートベルトリマインダーの設置が義務づけられています。

警報の鳴っている状態では落ち着いて運転できないため、強制的にシートベルトを着用するきっかけとなるでしょう。

参照:すべての座席でシートベルトを着用しましょう!- 乗用車の助手席と後部座席が新たに警報の対象になります -|国土交通省

後部座席のシートベルト着用が義務化された背景

シートベルト着用が義務化された背景には、シートベルトをしない危険性や致死率が大きいことがあると考えられます。
では、詳しく見ていきましょう。

シートベルトを着用しない危険性

後部座席であっても、シートベルトを着用しないと次のようなリスクが高まります。

・車外に放り出される可能性
・車内で全身を強打する可能性
・前席の人が被害を受ける可能性

時速60kmで走行している車が壁に衝突する力は、14階の高さから地面に落下するときと同じとされています。
そのため、命を落としかねませんし、助かっても重度の後遺症が残るおそれがあるでしょう。
さらに、後部座席の人がシートベルトを着用していなかったことが原因で、運転席や助手席の人にぶつかって被害が拡大することもあるようです。

シートベルト非着用時の致死率

警察庁によれば、後部座席におけるシートベルト非着用時の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)は、次のとおりです。

・高速道路で、着用時の約15.4倍
・一般道路で、着用時の約3.6倍

シートベルト非着用の危険性がよくわかると思います!

参照:すべての座席でシートベルトを着用しましょう|警察庁Webサイト

後部座席のシートベルト着用義務違反の罰則は?

後部座席の同乗者によるシートベルト着用義務違反について、罰金や反則金はありません。

しかし、高速道路で後部座席の同乗者にシートベルトを装着させなかった場合には、違反者1人につき違反点数1点が加算されます。

過去2年間、無事故・無違反・無処分だったならば、シートベルト着用義務違反があってもその後3ヵ月間違反なく過ごすことで、その点数は累積されません(点数計算の優遇)。
ただし、この場合でも違反歴としては残るので、ゴールド免許をはく奪されます。

また、違反歴があると保険料が高くなる可能性もあるので、注意しましょう。
一般道路であれば、口頭注意のみで、違反点数はつきません。

後部座席でのシートベルト着用義務違反に関する違反点数などをまとめると、次の表のとおりです。

【後部座席においてシートベルト着用義務違反があった場合】

高速道路一般道路
違反点数1点なし
(口頭注意のみ)
反則金なしなし
罰金なしなし

なお、運転手や助手席の同乗者がシートベルトを着用しなかった場合には、反則金や罰金はありませんが、一般道路であっても違反点数1点が加算されます!

参照:点数計算の優遇 警視庁

シートベルト着用が免除になるケースとは?

これまでご説明したとおり、シートベルト着用は法的な義務ですが、この義務は免除されるケースがあります。

道路交通法施行令第26条の3の2に規定されています。

(1)乗車する人の状況によってシートベルト着用が免除になるケース

たとえば次のようなケースであれば、シートベルトを着用できないやむを得ない理由があるとして、着用義務が免除されます。

• 座席数を超えて子どもを乗車させるためシートベルトが足りないとき
• ケガ、障害、妊娠で、シートベルトの装着が療養上または健康保持上適当でないとき
• 著しく座高が高くまたは低く、著しく肥満しているためにシートベルトを装着できないとき          など

ほかにも、つわりがひどくシートベルトをするとなおさら苦しくなる場合などであれば、無理にシートベルトを着用する必要はありません。

(2)仕事・業務でシートベルト着用が免除されるケース

たとえば次のようなケースであれば、シートベルトを着用できないやむを得ない理由があるとして、着用義務が免除されます。

• 自動車を後退させるとき(運転者のみ)
• 消防士等が消防用車両を運転するとき
• 警察官等の公務員が職務のために自動車を運転するとき
• 宅配業務、ごみ収集などで頻繁に乗降する区間で業務するとき
• 要人警護などで警察用自動車に護衛、または誘導されているとき
• 公職選挙法の適用を受ける選挙における候補者または選挙運動に従事する者が選挙カーを運転するとき      など

後部座席のシートベルト着用率と着用の必要性

このように、後部座席のシートベルト着用は義務であり、着用しないことには大きなリスクが伴います。
しかし、警察庁による2022年の調査では、全国の道路における後部座席同乗者のシートベルト着用率は以下の数値にとどまっている状況です。

  • 一般道路における後部座席同乗者のシートベルト着用率:42.9%
  • 高速道路における後部座席同乗者のシートベルト着用率:78.0%

これまで解説してきたように、後部座席の人がきちんとシートベルトをすることは、自分の命だけでなく、同乗者の命を守ることにもつながります。

万が一の交通事故に備えて、後部座席であっても必ずシートベルトを着用しましょう。

参考:シートベルト着用状況全国調査結果(令和4年)|警察庁

シートベルトは正しく着用することで効果を発揮する

まず、シートの背を倒さずに、シートに深く腰掛け、姿勢を正します。
次に、骨盤や腰の位置を確認して、シートベルトがねじれないように、また、たるまないようにセットします。このとき、肩ベルトが首にかからないようにしましょう。
最後に、バックルの金具を確実に差し込んでください。

【まとめ】後部座席の同乗者にシートベルトを着用させるのは運転手の法的義務

シートベルトの着用は、運転席か後部座席か、あるいは高速道路か一般道路かにかかわらず、法的な義務です。
また、シートベルトをしていない状態で交通事故の被害にあった場合、致死率やけがが重くなるリスクが高くなります。
それだけでなく、シートベルトの非着用を被害者側の「過失」と捉えられ、過失相殺により最終的に受け取ることのできる賠償金が大きく減額されるおそれもあります。
やむを得ない場合を除き、忘れずにシートベルトを着用するようにしましょう。

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この記事の監修弁護士
中西 博亮
弁護士 中西 博亮

弁護士は敷居が高く,相談するのは気後れすると感じられている方も多いのではないでしょうか。私もそのようなイメージを抱いていました。しかし,そのようなことはありません。弁護士は皆,困った方々の手助けをしたいと考えております。弁護士に相談することが紛争解決のための第一歩です。ぜひ気軽に弁護士に相談してみてください。私も弁護士として皆さまのお悩みの解決のために全力を尽くします。

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