後部座席のシートベルト着用は義務なのか?違反した際の罰則もあわせて解説

後部座席のシートベルト着用は義務なのか?違反した際の罰則もあわせて解説
「後部座席のシートベルト着用は義務なのか?」との問いに皆さんならどう答えますか?
  1. 法的義務である
  2. 努力義務である
  3. 高速道路では法的義務だが一般道路では努力義務である
  4. 義務ではない
2や3だと回答する方が多いかもしれません。
2019年に警察庁、JAFが実施した合同調査によると、一般道路において後部座席に座るときにシートベルトをしていない人は約6割にものぼります。
果たして、後部座席でシートベルトの着用は義務なのでしょうか。
弁護士が後部座席のシートベルト着用に関して、違反した際の罰則を含めて解説します。

後部座席のシートベルト着用は法律で義務化されている

以前、後部座席のシートベルト着用は、努力義務でした。
しかし、2008年の道路交通法改正によって、後部座席もシートベルト着用が義務化されました。
根拠条文となる道路交通法第71条の3第2項をみてみましょう。

自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(当該乗車装置につき座席ベルトを備えなければならないこととされているものに限る。以下この項において同じ。)に乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、幼児(適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するものを除く。以下この条において同じ。)を当該乗車装置に乗車させるとき、疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者を当該乗車装置に乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

引用:道路交通法第71条の3第2項

法律をみてわかるように、シートベルトの着用義務は高速道路か一般道路かで区別されていません。運転手は自動車を運転する場合、高速道路であれ一般道路であれ乗員全員にシートベルトをさせなければならないのです(やむを得ない理由がある場合を除く)。
6歳未満の子どもなどシートベルトを正しく着用できない場合には、チャイルドシートが必須です。チャイルドシートを利用せずに6歳未満の子どもを乗せて運転してはいけません(道路交通法第71条の3第3項)。

シートベルト着用義務違反の罰則は?

シートベルト着用義務違反について、罰金や反則金はありません。
しかし、高速道路を運転しているにもかかわらず後部座席の人にシートベルトを装着させなかった場合には、違反者1人につき違反点数1点が加算されます。
過去2年間無事故・無違反・無処分だったならば、シートベルト着用義務違反があってもその後3ヶ月間違反なく過ごすことで、その点数は累積されません(点数計算の優遇)。
ただし、この場合でも違反歴としては残るので、ゴールド免許をはく奪されます。
また、違反歴があると保険料が高くなる可能性もあるので、注意しましょう。
一般道路の運転中であれば、口頭注意のみで、違反点数はつきません。

シートベルトを着用していないと事故の際の危険性が大幅に高まる

シートベルトを着用しているかによって、安全性はどの程度異なるのでしょうか。
交通事故の死亡者数は、年々減少しており、2019年では統計史上最少の3215人でした。
しかし、平均して毎日8、9人の方が命を落としているのも事実です。
車が時速40㎞で前方の障害物とぶつかるのは、6階の高さから落ちるのと同じ衝撃だと言われており、後部座席の乗員には体重の約30倍の強い力がかかります。
そのような事故の衝撃から命を守ってくれるのがシートベルトです。
シートベルトをしていれば事故に遭ってもわずか約1%の人しか車外に放り出されないのに比べ、シートベルトをしていなければ5人に1人は車外に放り出されてしまいます。
車外に放り出されると、地面に叩きつけられ、あるいは、後方車両に弾かれ、約4割の人が命を落とします。
シートベルトをしていない人が命を落とす危険性は、シートベルトをしている人の約14倍です。シートベルトをすることがどれだけ命を守ることにつながるかわかるでしょう。
後部座席だからといって、シートベルトを着用しないと次のような危険性があります。
  • 車外に放り出される可能性
  • 車内で全身を強打する可能性
  • 前席の人が被害を受ける可能性
時速60kmで走行している車が壁に衝突する力は、14階の高さから地面に落下するときと同じです。そのような力でフロントガラスにぶつかれば、フロントガラスを突き破り、地面に叩きつけられ、命を落としかねません。運良く助かっても重度の後遺症が残る可能性があります。
さらに、後部座席の人が運転席や助手席の人にぶつかれば、前の座席の人はエアバックと座席に挟まれ、大けがをするかもしれません。
後部座席の人がきちんとシートベルトをすることは、自分の命だけでなく、同乗者の命を守ることにもつながるのです。
2020年9月以降、後部座席でシートベルトをつけていない場合に警報の鳴るシートベルトリマインダーの設置が義務付けられます。
警報の鳴っている状態では落ち着いて運転できないため、強制的にシートベルトを着用するきっかけとなるでしょう。

シートベルトは正しく着用することで効果を発揮する

まず、シートの背を倒さずに、シートに深く腰掛け、姿勢を正します。
次に、骨盤や腰の位置を確認して、シートベルトがねじれないように、また、たるまないようにセットします。このとき、肩ベルトが首にかからないようにしましょう。
最後に、バックルの金具を確実に差し込んでください。

シートベルト着用が免除になるケースとは?

シートベルトの着用義務が免除されるケースとはどのようなケースでしょうか。
道路交通法施行令第26条の3の2第2項に規定されています。

(1)乗車する人の状況によってシートベルト着用が免除になるケース

次のケースであれば、シートベルトを着用できないやむを得ない理由があるといえます。
  • 座席数を超えて子どもを乗車させるためシートベルトが足りないとき
  • ケガ、障害、妊娠で、シートベルトの装着が療養上又は健康保持上適当でないとき
  • 著しく座高が高く又は低く、著しく肥満しているためにシートベルトを装着できないとき
たとえば、つわりがひどくシートベルトをするとなおさら苦しくなる場合には、無理にシートベルトを着用する必要はありません。

(2)仕事・業務でシートベルト着用が免除されるケース

次のケースであれば、シートベルトを着用できないやむを得ない理由があるといえます。
  • 自動車を後退させるとき
  • 消防士等が消防用車両を運転するとき
  • 警察官等の公務員が職務のために自動車を運転するとき
  • 宅配業務、ごみ収集などで頻繁に乗降する区間で業務するとき
  • 要人警護などで警察用自動車に護衛、または誘導されているとき
  • 公職選挙法の適用を受ける選挙における候補者又は選挙運動に従事する者が選挙カーを運転するとき

【まとめ】交通事故に関するトラブルのご相談はアディーレ法律相談所へ

「後部座席のシートベルト着用は義務なのか?」との問いの答えは「1.法的義務である」です。シートベルトを着用しているかどうかによって事故に遭った場合のリスクは大きく異なるので、やむを得ない場合を除き、忘れずにシートベルトを着用するようにしましょう。
交通事故に関するトラブルでお困りならば、アディーレ法律相談所へご相談ください。

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この記事の監修弁護士

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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