「いつもの夫婦喧嘩だと思っていたら、いつのまにかヒートアップして、ついには離婚話にまで発展してしまった…」
夫婦喧嘩の結果、思いもよらず離婚話に発展し、慌てている方もいるかもしれません。
夫婦であっても他人である以上、育ってきた環境や価値観が異なりますので、意見や考えの違いから喧嘩になることがあります。
喧嘩後仲直りしたり、話合いにより歩み寄ったりできればよいのですが、そのまま離婚に発展してしまうケースもあります。
今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 夫婦喧嘩が離婚に発展するケースや
- 離婚回避する方法
よくある夫婦喧嘩の原因
夫婦であっても、結婚する前は違う人生を生きてきており、価値観や生活習慣も異なりますので、考え方や性格の違いや、配偶者に対する言動などによって夫婦喧嘩が生じることがあります。
よくある夫婦喧嘩の原因は、次の通りです。
- 嘘をつかれる
- 約束を守らない
- 互いの金銭感覚が合わない
- 夫(妻)の収入に不満がある
- 夫(妻)のいい加減な性格にいら立つ
- 妻(夫)の料理や掃除(家事)の仕方が気に入らない
- 家事の分担割合に納得できない
- 子育ての方針が合わない
- 子育てに主体的に関わらない
- 浮気が発覚する
- 義家族との関係が悪く、夫(妻)も味方をしてくれない
- 休みの日も家族ではなくプライベートを優先する
離婚問題に発展する可能性がある夫婦喧嘩
夫婦喧嘩の多い少ないは、夫婦の性格や状況によって異なりますので、一概に、喧嘩が多いから夫婦仲が悪い、少ないから夫婦仲がよいということはいえません。
喧嘩が多いけれども、その度に話し合って解決して、自分たちなりの夫婦としての形を整えている夫婦は、長い目で見ると安定的な夫婦関係を築くことができる可能性があります。
一方で、夫婦喧嘩はないけれども、それは夫婦の一方が我慢して耐えているだけという場合、ある時点で不満が爆発して、夫婦関係を修復できずに離婚せざるをえなくなった、という事態となる可能性もあります。
通常、離婚問題に発展しうる夫婦喧嘩は、その喧嘩の結果、将来的に信頼しあって家族として暮らしていけない、と感じるか否かという点がポイント になります。
たとえば、一方の浪費による借金が明らかになった場合であっても、浪費による借金をしないと約束し、借金解消へ努力することができれば、家族としての将来像が予想できますので、ただちに離婚を決断する人は少ない印象です。
一方で、話し合っても浪費を繰り返したり、「もう借金しない」と約束したのに隠れて借金したりしているような場合には、信頼関係に基づく家族関係の構築は困難であると感じ、離婚を検討する人が多くなる印象です。
浮気についても、喧嘩しながらも話し合って信頼関係を回復することができれば、離婚するとは限りません。
しかしながら、一度浮気をしてしまうと、今までの夫婦の信頼関係は崩壊し、新たな信頼関係を築くことは大変な努力が必要です。また、浮気をされた側の精神的苦痛の大小も人によって異なりますので、夫婦関係修復の過程で、離婚するという結論に達する夫婦もいます。
感情的な夫婦喧嘩だけで離婚に発展するわけではない
仕事や人間関係のストレスで八つ当たりしてしまったり、ふとした発言で言い合いになってしまったりして、喧嘩に発展してしまうことはあります。
人間ですから、感情的になって、配偶者が気にしている、傷つけてしまうとわかっていて乱暴な言葉を発してしまうこともあります。
たとえば、「結婚しなければよかった」、「ほかの人より収入が低いくせに」など、結婚したことを後悔したり、すぐには変えられない収入について責めるような発言をしたりすると、相手は傷つき、防衛するために逆に傷つけるような反論をしてくるかもしれません。
感情的になると、互いに気にしている身体的特徴やコンプレックスについて、あえてからかって貶めるような発言、義家族の一方的な悪口などを言ってしまうこともあります。
このような感情的にお互いに傷つけあうような夫婦喧嘩をしてしまっても、通常、冷静になれば自分が言いすぎたことはわかりますので、謝罪したり再度話し合ったりすることで、関係は修復に向かうでしょう。
夫婦喧嘩による離婚を回避する方法はあるのか
夫婦喧嘩してしまったが、上手に仲直りするきっかけがつかめない人もいます。
仲直りできるはずであったのに、きっかけがつかめずに夫婦関係が破綻に向かってしまい、離婚せざるをえなくなるのは避けたい ところです。
ここでは、夫婦喧嘩から仲直りする方法、自分たちで話し合うことが難しい場合の解決法、裁判所の調停を利用して仲直りを図る方法について説明します。
(1)夫婦喧嘩から仲直りする方法
夫婦喧嘩から仲直りするために、一番大切なのは、「仲直りしたい」という気持ち だと考えられます。
仲直りしたいという気持ちがあれば、配偶者が何で怒っているのか、何を気にしているのか、何をすれば仲直りのきっかけがつかめるのか、夫婦としての経験から自然とわかってくることがあると思われます。
仲直りは相手方がいることですので、一般的な仲直りする方法を実践しても、自分の配偶者に効果があるとは限りませんが、次のような仲直りの方法が考えられます。
理路整然と話しすぎない
あまりに論理的な物言いは、相手を不愉快にすることがあります。
相手が話しているのに、途中で遮って自分の意見を言わない
相手の話は最後まで聞くようにしましょう。話を途中で遮ってしまうと、相手は話を聞いてもらえなかったと不満を感じます。また話を遮ることを繰り返すと、相手に「この人は自分の話を聞いてくれない」と思われてしまい、夫婦間のコミュニケーションが損なわれてしまいます。
「でも」、「だって」など、否定・反論する言葉を使いすぎない
相手の言葉に異論があっても、まず相手の言葉を受け止め、「それも一理ある」、「気持ちはわかる」などと同意や共感を示すことが大切です。
相手は、「自分の気持ちをわかってくれた」と感じ、こちらの話にも耳を傾けてくれるようになるでしょう。
自分の意見を押し付けない
自分と同じように、相手にも意見があります。
自分の意見を100%押し通すことを目指すのではなく、お互いの妥協点を見つける努力をしましょう。
自分にも悪い点があれば素直に謝罪する
自分にも悪い点があったと自覚した場合には素直に謝罪し、その気持ちを相手に伝えるようにしましょう。
9割は相手の話を聞き、1割程度自分の意見を話すイメージをもつ
相手は、自分の意見を真剣に聞いてほしいだけかもしれません。きちんと耳を傾ければ、それだけで仲直りにつながることもあります。
(2)裁判所の夫婦喧嘩仲裁で離婚を回避
あまり実務上は利用されていませんが、当事者同士で夫婦間の問題が解決できない場合、家庭裁判所に対して夫婦関係調整調停(円満) を申し立てて、調停委員仲介のもとで、問題解決と仲直りを目指す方法があります。
調停では、調停委員が当事者双方から話を聞き、問題点を整理したうえで、当事者の話合いによる解決をあっせんします。
調停において調停委員という第三者の客観的な意見を聞いたり、調停委員の仲介により冷静な話合いをしたりすることで、円満な夫婦関係の調整を目指すもの です。
調停申立手続は自分で行うことができますが、弁護士に依頼して弁護士に手続きをしてもらうこともできます。
(3)裁判所の夫婦関係に関する調停

夫婦関係調整調停(円満)のほかにも、夫婦関係の問題解決のために利用できる裁判所の調停があります。
婚姻費用の分担の調停 は、夫婦の間で、婚姻から生じる費用の分担について、当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合に利用することができます。 婚姻から生じる費用(婚姻費用)とは、未成熟子(経済的社会的に自立していない子)を含めた夫婦一体の共同生活に必要な費用のことです。夫婦は、その資産や収入、その他一切の事情を考慮して、婚姻費用を分担することとされています(民法第760条)。
夫婦が同居している場合は、通常、話合いに基づいてそれぞれ婚姻費用を負担し合っていますので、婚姻費用の分担が問題になるのは、主に別居した場合です。
別居後に婚姻費用が支払われなくなり、話合いでも解決できない場合には、婚姻費用の負担を求めて、相手方に対して、婚姻費用分担調停を申し立てることができます。
また、 夫婦間であっても、配偶者に対して、不法行為について慰謝料を請求することができます。
たとえば、配偶者による不貞行為や、暴力行為は、不法行為として、それにより受けた精神的苦痛について慰謝料を請求できる可能性があります。
当事者間の話合いで解決できればよいのですが、話合いによる解決ができない場合には、 慰謝料請求の調停を申し立てて、調停手続のなかで調停委員あっせんのもと、話合いによる解決を目指す ことができます。
配偶者が不貞行為や暴力行為の事実を否定している場合には、客観的に、不貞行為や暴力行為の存在を証明するための証拠が必要となりますので、事前に証拠を確保するようにしましょう。
手続きは自分で行うことができますが、弁護士に依頼して弁護士に手続をしてもらうこともできます。
夫婦関係継続が難しい場合は最終的に離婚も視野に

日本では、夫婦で離婚に合意し、必要事項を記入した離婚届を提出することで離婚が成立しますので、比較的簡単に離婚することができます。
したがって、夫婦喧嘩をして「離婚したい」と思っても、 離婚は比較的簡単にできますので、一度冷静に夫婦関係について考えて、関係修復が可能かどうかを検討する ことをおすすめします。
冷静に考えて対処しても、やはり離婚したほうがよいという結論に至ったら、最終的に離婚しても遅くはありません。
離婚の際には、財産分与や親権、養育費、面会交流など、事前に話し合って決めておかなければならないことがあります。話合いによってこのような離婚条件について合意し、離婚することができれば、それが一番いいです。
しかしながら、夫婦関係が破綻していて話合い自体が困難なことや、話し合っても歩み寄りの姿勢がなく合意できないケースもあります。
そのような場合には、弁護士に依頼して代理人として相手方と離婚について話し合ってもらうこともできますし、家庭裁判所に対して、離婚調停を申し立てて、調停委員仲介のもとで、離婚条件について話合う方法もあります。
離婚すると決意した場合には、離婚の際に話し合うべき事柄、交渉方法などについて、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
【まとめ】夫婦喧嘩が離婚に発展しないようお互いを尊重し、ときには素直に謝罪を
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 離婚問題に発展しうるかどうかは、その喧嘩の結果、将来的に信頼しあって家族として暮らしていけない、と感じるか否かという点がポイント
- 身体的特徴や収入についての発言、義家族の悪口などを言ってしまった場合であっても、謝罪したり再度話し合ったりすることで関係を修復できれば、感情的な夫婦喧嘩が離婚に発展するとは限らない
- 夫婦喧嘩からの一般的な仲直り方法
- 理路整然と話しすぎない
- 相手が話しているのに、途中で遮って自分の意見を言わず、最後まで話を聞く
- 「でも」、「だって」など、否定・反論する言葉を使いすぎない
- 自分の意見を押し付けず、妥協点を見つけられるようにする
- 自分にも悪い点があると思ったら、素直に謝罪する
- 9割は相手の話を聞き、1割程度自分の意見を話すイメージをもつ
- 家庭裁判所に夫婦関係調整調停(円満)を申し立てたりして、仲裁してもらうという手段もある
- 夫婦関係継続が難しい場合は離婚も考えよう
夫婦喧嘩には、夫婦関係を修復できる夫婦喧嘩と、残念ながら離婚に発展してしまう夫婦喧嘩があります。
夫婦関係の修復には、双方の努力が必要になりますので、「相手方が悪い」という気持ちは少し置いておいて、相手方の意見や考えに耳を傾けて、譲歩する姿勢を示せるとよいでしょう。
当事者同士で話し合うのが難しい場合には、家庭裁判所の調停手続きを利用して、裁判所関与の下で話し合うこともできます。
調停手続でわからない点がある場合や、調停手続について弁護士への依頼を考えているような場合には、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。